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12レッドストーン(yonausa.net/redstone/)> 小説目次>小説5『未来、ネクロマンサーとウルフマン』
ネクロマンサーは知られたくない。ウルフマンは記憶がない。となれば?
--------------------X 未来、ネクロマンサーとウルフマン--------------------
数時間前、ビーストテイマーのティマとサマナーのサナに見つかってしまったネクロマンサーのシュマリーは、彼女らの家に連れ込まれてウルフマンのウィメンの事を何か知っていないかと問い詰められた。
ウィメンに過去の記憶がないことを知ったシュマリーはショックだったが、ほっとしてもいた。
少なくとも昔の自分と今の自分を比べられないですむわけだから。
でも、ウィメンが過去を思い出せなくて苦しんでいるらしく、話すだけ話してみようという気になったのだ。
シュマリーの話を聞き終えたティマは、大きくうなずいた。
『なぁるほど〜』
『つまりぃ、シュマリーさんは、以前は悪魔さんだった。ウーちゃんも、以前はウィザードさんだった』
『そんで、悪魔さんとウィザードさんは一緒に生まれ変わった。でも、今の姿を見られるのがイヤで今までコソコソしてた』
その気持ちわかる〜!!と、ティマはシュマリーに同意して沸き立つ。
シュマリーもそんなティマに今までの悪い気持ちはふっとんで、二人意気投合する。
『どうみても、今の姿はイケてないもんね』
グサッ・・・
ティマの一言に再びすねるシュマリー。気にしているだけに他人には言って欲しくない一言だ。
『こら、失礼なこと言わないの!まったくもうティマは一言多いんだから』
サナはティマを叱ると、疑問に思っていたことを口にした。
『それで、もう一人の追放天使さんはどうしたの?彼も一緒に生まれ変わったんでしょ?』
シュマリーも、その質問には答えられなかった。沈黙してしまう。気も重くなる。
シュマリーが気づいた時には、すでに彼の姿はなかったのだ。
どこかでウィメンのように記憶をなくして暮らしているのか。過去と決別しようとがんばって暮らしているのか。
それとも・・・
失敗して永遠にいなくなってしまったのか・・・。
重い空気が流れる。
その時、ウルフマンのウィメンもシュマリーの話を少し離れた所で聞いていた。
ウィザード 悪魔 追放天使 ・・・
レッドストーン・・・・・
話に出てきたキーワードを復唱してみる。
『どう?ウーちゃん、何か思い出した?』
ティマがウィメンの様子を察して話しかけた。
ドキドキしながら返答を待つシュマリーをよそに
『うーん、どれもピンとこない・・・』とウィメンは告げた。
ティマはそれを受けて、ウィメンを抗議しだした。
『ウーちゃん、ひどいっ!シュマリーさんのこと忘れちゃうなんて!愛してなかったわけ?体が目的だったわけ!?』
『こんなにウーちゃんの事想ってくれてるのに!!かわいいとこあるじゃない!!抱きしめてあげなさい!!!』
『ちょっ・・愛するも何も・・・その日数時間だけのことだったんじゃないか。そんなに攻められる筋合いはないだろ』
ティマにそう言い返すと、シュマリーと一瞬目が合った。動揺して目が泳ぐウィメン。
『愛に時間は関係ない!』
変に興奮しまくり、最後にはドラマの決めゼリフ的に言い放つティマに、たじたじのウィメンだった。
シュマリーは言い合う二人を複雑な気持ちで眺めていた。
ティマはシュマリーに味方してウィメンに言ってくれているのだろうが、その様子があまりにも楽しそうに見える上、
数時間だけのことで愛とか言ってる自分が惨めにも思えたからだ。
やっぱり、過去の事は話さずに影から見ていたほうがよかった・・・
そんな弱気な気持ちになるシュマリーの背中を、サナはポンッと軽く叩くと、
『シュマリーさん、気を落とさないで。記憶がないなら今から作ればいいわ。ここでしばらく一緒に暮らしましょうよ』
と、励まし提案した。
その夜、少し遠出してキャンプをすることにした。午後から出かけてテントを一つ張った。
その後に、みんなで周りから枝を拾って来て、平地の真ん中に枝を組み上げて作ったキャンプファイヤーも準備した。
日が暮れ始めると、キャンプファイヤーに火をつけた。
轟々と燃えるキャンプファイヤーを囲って、夕食を取ることにした。
夕食はバーベキュー。肉や野菜を串刺しにして焼き始めるとおいしいにおいが辺り一面に広がる。
そして、みんなでこんがりと焼きあがったバーベキューを口いっぱいにほお張った。
『あ〜、食った、食った』
『おいしかったね〜☆またバーベキューやろうね〜』
ウィメンとティマは自然に食事の感想を言い合いながら和んでいたが、シュマリーはまだ緊張しているのか食が進まなかった。
そんなシュマリーに声をかけたのはサナだった。
『バーベキュー、好きじゃなかった?』
その質問に頭を横に振って否定するシュマリー。
『お、おいしかった。い、今までこんな豪華な食事したことなかったし。す、すごくおいしかったです』
恥ずかしげに照れながら話すシュマリーにサナは、『そう、それはよかった。また一緒にやりましょうね』と微笑んだ。
その後にシュマリーは、『キャンプファイヤーもいいですね。炎見ていると落ち着きます』
と、ぽつりと小さい声で言った。
フフ、『そうね。私もゆらめく炎好きよ。ケルピーの炎は危なっかしくてちょっとかんべんしてほしいけどね』
と、サナはケルピーに毒づきながら、後片付けしにシュマリーのそばを離れた。
一人になったシュマリーは、まだ楽しく話しているウィメンとティマに目をやった。
楽しそうな目をしているウィメンをみつめる。自分に向けられた目とはやはり違う。
これが本当のウィメンなのかもしれないな・・・・
やさしい眼差しで、自分に共感してくれて、真剣に諭してくれた彼の顔が思い浮かぶ。
あんな状況でのことなのだから、人としての好意だけだったのだろうが・・・。
一緒に生きよう
今も彼のその言葉で満たされるものがあった。
それを先に裏切ったのは私の方。ネクロマンサーの自分が嫌で、彼を残して去ったのに・・・。
未練たらたらなんてそれこそみっともない。
それでも、どっかで期待してしまうなんて・・・
悪魔のプライドは、どこいっちゃったのかな・・・
ドッキン!
そんなことを考えていた矢先に、ウィメンがシュマリーの方を見た。
シュマリーは、ウィメンと目が合ってしまって心臓が飛び出しそうなくらいびっくりした。
ドキドキがおさまらないシュマリーに、思いがけないウィメンの笑顔は毒だった。
『シュマリーさん、花火しませんか?』
『こっちおいで〜。一緒にしようよ〜』と、ティマも花火を用意しながら声をかける。
シュマリーは、ぷしゅ〜っっと、頭から湯気を噴出し、体中真っ赤になってひっくりかえってしまった。
『え、え、えええ、どうしたの!?シュマリーさーん。しっかりしてぇぇ〜』
ウィメンもティマも慌てて駆け寄る。
どうやら、悪魔のプライドどころか男に対する免疫力もなくなってしまったようだ。
あんな笑顔くらいで・・・・
うれしくて興奮の末、噴火とは・・・
自分にあきれながらも、顔はにやついていた。
『やだ、シュマリーさん、熱い!熱いよ、大丈夫!?』
ティマは、熱が出てると大慌てでサナを呼び、叫ぶ。
『サナ、サナ〜。氷か濡れタオル〜!!!』
熱に浮かされながらいつのまにか眠りについてしまったシュマリーは、少しひんやりとした涼しい風で目が覚めた。
満点の星空の下、キャンプファイヤーの炎がシュマリー達の眠りを守っていた。
今何時だろ?
上半身を起こし、辺りを見回す。
左右両隣りで自分を挟むようにサナとティマが寝ていて、サナの召還獣達とペット達も主の隣で眠っていたが、シュマリーの気配に起きたようだ。シュマリーを黙って見ている。
キャンプファイヤーを挟んだ向こう側にウィメンの姿があった。
炎を眺めて考え込んでいるようにも見えた。
二人は寝ている。召還獣やペットは問題ない。
これは、そばに行って話すチャンスではある。だけど、何を話せばよいのか見当がつかない。
そばに行くべきか、また寝てしまおうか。
行動する勇気が出せずにぐずぐず迷っていると、ウィメンの方が先に声をかけてきた。
『シュマリーさん起きたんですね。具合どうですか?』
やさしい眼差し。やさしい声。ああ、心地良い。
だけども直視できないシュマリーは、頭を何度も下げて答える。
『も、もう大丈夫です。すすす、すみませんでした』
そう言っておそるおそるウィメンに近寄ると、ウィメンからひとり分くらい離れて腰を下ろし、キャンプファイヤーを前にうつむいた。
『オレのほうこそごめんね。シュマリーさんのこと思い出せなくて・・・・・その・・・』
ウィメンが申し訳なさそうに言葉を発した。
それを慌ててシュマリーは遮り、早口で言い切る。
『いいい、いいいんです。昔のことですし。も、もう生まれ変わったのですから。お互い過去のことは忘れて・・・・あ、忘れてたんでしたっけ』
『じ、じゃあ、そのままで。おおお、思い出さなくてもいいですから・・・・・』
『わ、私はぜんっぜん大丈夫ですから・・・!!ティ、ティマさんと今までどおりに・・・』
ウィメンが口を挟む間を与えずに、言いたいことだけ言ったシュマリーの目からは涙があふれる。
だけど、鉄格子の中の顔が見えないせいで、泣いているなんてウィメンは知らないだろう。
知っていてもかける言葉がみつからないに違いない。
触れられる近くにウィメンがいるのに、遠くから見ていた時のほうが幸せだったかもしれない。
まだ、希望を持っていられたから。私のことを想ってくれているって、勝手に決め付けていられたから。
こんな自分を見られたら、ガッカリさせちゃうなんて・・・思い上がりもいいとこだった。
あはははは。笑える。お腹がよじれちゃうくらい笑える。
もう、泣き笑いってやつ。
人目を気にせずに涙を流せるなんて、ネクロマンサーばんざーい!!
ヒュルルルル・・・・・
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
バババババババババババン!!
ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
夜空に大輪の花が舞う。
何色もの色や花やハートなど形を成し彩る。夜空に打ち上げられた花火は芸術だ。
次から次と表れては、消えていく。
キレイだが、儚い。一瞬の形。
どんなに短くたって精一杯輝ければすばらしいに違いない。
あまりに突然の花火に、泣くことを忘れたシュマリーは見入ってしまった。
ポカーンと夜空を見上げている。
ウィメンは、フっと笑うと『ティマ達のしわざみたい。花火』と言った。
たしかに、いつのまにかティマもサナの姿も寝床にはなかった。
『真夜中の花火なんて近所迷惑だろうけど、突然シュマリーさん倒れちゃうから花火やってなかったんだ。起きたらやろうって話しはしてたけど、突然でびっくりしたね。でもよかったでしょ?』
ウィメンはシュマリーに同意を求める。
『ははは、はい。き、きれいでした。あれが花火っていうんですね』
『うん。そうみたい。じつはオレも初めて見た』あははは。
この時初めて自然に笑い合えた二人であった。
『あ・・・、いいにおい』
クンクンクンクン・・・ウィメンは鼻でにおいの元を探るしぐさをして、シュマリーに寄ってきた。
『・・・・・!?』シュマリーは、逃げ腰で体制をずらしながらもかなりうれしい。
ウィメンとの距離が近い!近すぎる〜〜〜!!キャウ〜〜ン、また卒倒しちゃいそう〜〜〜!!
『うん、シュマリーさんのにおいだ。いい香り♪』と、無邪気に褒めるウィメン。
『ア、アリガトウ』と、褒められ慣れていないシュマリーは、照れすぎで棒読みになってしまった。
内心は心臓バックバクのドッキドキ、頭シューシュー警笛ならしながら走り抜ける幸せに満たされていた。
ああ、天国です。快感です。
二人が少し打ち解けた頃、花火をこっそり遠くから打ち上げて、場を演出したティマとサナが戻ってきた。
そして開口一番、『ヒューヒュー♪二人が仲良くなってる〜!何?何があったの?』と、ティマは冷やかした。
『お前たちの花火のおかげかもな?』と、ウィメンは謎に満ちた口調でふざける。
『おぉ?ますますあやしいんじゃない?』と、ティマはそれにつっこむ。
『あっ・・・!も、もしや、もう・・・XOXOXOXO!?』と、口をおさえて大げさに驚いてみせるティマ。
『だ〜〜!!お前の思考回路は飛びすぎぃ!!』と、顔を真っ赤にしてそれに抗議するウィメン。
ひるむことなく『オオカミだけに手が早〜い。くわばらくわばら〜』と言い捨てながら逃げ回るティマと、
『その口をふさいでやる〜!!ガルルルルル』と、追いかけるウィメン。
『まぁったくもう、ティマは一言多いんだから。気にしないでね。シュマリーさん』
と、サナはシュマリーに手持ち花火を渡す。
『あんなバカな二人のことはほっといて、こっちはこっちで楽しんじゃいましょう』
『ぜぇったい、ず〜る〜い〜って、飛んでくるから』と、サナはシュマリーに耳打ちした。
花火に火が点くとシュシュシュシュ〜〜バチバチバチバチと、火花が噴出した。
何本も点火した花火を持ってクルクル回るサナ。
『ね?火の軌跡がキレイでしょ?シュマリーさんもやってみて』と、誘う。
『おおお〜』と、二人して花火をいろんな方向にかざしたり、回したり、波打たせたりして遊ぶ。
召還獣もサナの楽しい雰囲気を察してか、高揚して走り回る。
サナ達が花火をやり始めるとすぐにティマは気付いて、
『あああ〜!!ずる〜い!!!ティマもやるのにぃ〜〜』と、駆け寄ってきた。
ウィメンも吠えながら花火に参加した。
『ほらね』と、サナはシュマリーに目配せする。
くすくすくすと笑い合う。それを見たティマは気を害し、
『何よぉ、何がおかしいのよ〜!!!やなかんじぃ』と、ぷんぷん怒りながらも、夜が明けるまでみんなで楽しんだ。
シュマリーは、だんだん緊張が薄れるにつれ、みんなのそばがこんなにも安心できるんだと実感してきた。
ウィメンは元より、ティマもサナも召還獣やペット達も好きになっていた。
もう過去にこだわる必要はないとふっきれたかんじがしていた。
朝になると、キャンプファイヤーの火も絶えて煙が細く立ち昇った。
太陽が真上に来る頃には、家に帰ってきたみんなは遊び疲れて爆睡していた。
翌朝、家の中がぐちゃぐちゃに荒らされていた。
一番に起きて異変に気付いたサナは、慌ててみんなを起こしに走る。
いったい何が起こったのか・・・・
その惨状を目の当たりにすると、姿なき恐怖が押し寄せてきた。
この章は、ウルフマンとネクロマンサーが打ち解けて仲良くみんなで暮らしていけそうな雰囲気を出してみました。
伝わりましたでしょうか?しかし、最終話に向けて不穏な空気を持ってきました。波乱で盛り上げていきますよ〜。お楽しみに。